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2004年 08月 08日
第2回 間違ってない? アイシングの全て
 いまや当たり前となりつつあるアイシング。プロ野球のテレビ中継でもベンチに下がった投手が肩に分厚いラップを巻いてアイシングをしている姿が映し出されたりする。ではなぜアイシングをするのか?その効果はどれほどあるのか?いつアイシングをしたらいいのか?・・・一体どれほどの人がこれらの質問にすぱっと答えることができるだろうか?今回はアイシングに関していまいちよく分からないという人のためにアイシングの基礎知識からハウトゥーまでをお話しよう。

 まずはアイシングを実施するべき時とはいつなのか?

 これは「いつでも」だ。怪我をした直後や運動後は当然だが、どこか痛みのある場合はその箇所を練習前に行ってもいいし、特別どこかに痛みがなくても練習や試合後は実施する事をお勧めする。運動後にアイシングをするということは食事の後に歯磨きをするようなもので、ワンセットであるべきものなのだ。歯磨きをしなければいつか虫歯になり、治療を受けなければならなくなる。その前に予防しておくことが大事。

 予防と関連してアイシングの効果であるが、選手にとって一番直接的な効果は痛みの軽減である。なぜ痛みが軽減するかというと、アイシングにより細胞が一時的に仮死状態になるからである。仮死状態になるということは細胞への血流が減るということで、その結果、炎症拡大の防止、疲労物質のせき止め、筋肉緊張の緩和、腫れを抑えるなどの効果が期待できる。

 アシシングする長さは1回が20分。再び実施する場合は皮膚の感覚が戻ってきてから行うようにする。捻挫や肉離れのような急性のケガの場合、かつ次の日どうしても試合に出なければいけないなど言う場合には、その日の夜に2時間間隔でアイシングを繰り返すのがベストと思われる。これには他者の協力が絶対必要になる。この時期によくある話だがアイシングの冷たさが気持ちよく、アイシングしたまま寝てしまうということを聞くが、長時間一定の部位を冷やすと凍傷の危険性もあるので注意すること。逆に冬の寒い時期でも20分しっかり行うこと。短くても効果はでない。

 実際のアイシング方法は大きく分けて3種類ある。

  1.直接氷を皮膚に当てて行う方法
  2.氷嚢やビニール袋に氷を入れて皮膚に当てる方法
  3.水の中に直接患部を浸す方法

 「1.直接氷を皮膚に当てて行う方法」は大きな筋肉(太腿・ふくらはぎ・足裏、腰等)をマッサージしながら冷やす目的。肉離れなどの筋肉のケガの際によく使用する。紙コップなどに水を入れて氷にしておき、トップの口の部分を破いて患部をマッサージしながら10~12分行う。(写真1)

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 一箇所に止めておくと冷えすぎてしまうので常に動かしておくようにする。マッサージを入れると筋肉のリラックス効果も大きい。(写真2)

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 時間が短いのは氷が直接皮膚に当たっているため。ペットボトルに水を入れ凍らせて行う方法もある。(写真3&4)

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 「2.氷嚢やビニール袋に氷を入れて皮膚に当てる方法」は最も一般的な方法で関節でも筋肉でもどちらにも用いることができる。この際のポイントは袋の中の空気を抜いて、出来る限り皮膚と氷の接する面を増やすことと(写真5)

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ラップなどで軽い圧迫を加えること。そうすることでより効率のよいアイシングをすることができる。肩にラップを巻く場合は写真のように行うとしっかりと固定できる。(写真6.7.8)

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また袋の場合縛った口を頭側にに向けると溶けた水が漏れてこないので覚えておくとよい。また出来る限り広い範囲をカバーするために若干大きめに作り、必要であれば複数使用してもよい。一番手軽な方法である。

 「3.水の中に直接患部を浸す方法」は関節と筋肉を同時に冷やす事が出来るので効率はよいが、その分スペースも必要となる。水温は10度前後で患部を直接水の中に入れる。時間は10分程度が目安。この方法の利点は大きな範囲を冷やすことができるのと、同時に多数の選手にアイシングを行うことが出来ることである。走ることが多い時期であれば、バスタブに膝の高さまで水を張って立たせておけば一度の両膝、すね、ふくらはぎ、足首など広い範囲を冷やすことができる(写真9)し、選手とのコミュニケーションの場にも活用できるであろう。選手人数が多いチーム、合宿時にはお勧めの方法である。

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 アイシングを行う際の注意事項もいくつかある。

 まずは擦り傷や切り傷などがある場合、傷口に直接氷が当たらないようにすること。ガーゼなどを一枚挟むとよい。またこの場合は他の選手と一緒に水中に入ることは避ける。氷や極端に低い温度に対してアレルギー的な反応を示す人もまれにいるので注意する。

 アイシングと湿布はどっち?

 これはどちらかがいいのではなく、両方いいのだ。ただその目的が若干違う。アイシングが患部を冷やし前に述べたような効果を期待するのに対し、湿布は痛みをとるということに特化している。受傷後は痛みだけでなく腫れてきたり、変色してきたりもするので、湿布よりもアイシングをするほうがそれらを抑えることが出来るだろう。ある程度腫れをコントロールすることが出来たなら、湿布の上からアイシングするなどして両方を上手く活用するとよい。

 コールドスプレーでは冷えない!

 多くの方が勘違いしていると思うがコールドスプレーでは患部は冷えない。打撲の直後にコールドスプレーをかけたりするが、あれは冷やそうとしているのではなく、患部に痛み以上の強い刺激を与えて痛みを麻痺させようとしているのである。応急処置としてはそれでもよいが、試合後・練習後には必ずアイシングを実施してきちんとしたケアをする必要がある。

 以上、アイシングについての基礎知識とハウトゥーを述べさせてもらったが、アイシングはきちんとやり方さえ守ればいくら行ってもなんら問題のないものである。今回説明した手順を守り、是非食後の歯磨き感覚で取り組んでもらえればと思う。

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 次回は疲労回復献立フルコース。お母さんは必読!!


【筆者紹介】
トレーナーズユニオン所属アスレティックトレーナー
氏  名:津金 豊(ツガネ ユタカ)
保有資格:全米アスレティックトレーナーズ協会認定アスレティックトレーナー
経  歴:サウスウエストテキサス州立大学スポーツ科学部、アスレティックトレーニング学科卒業
実  績:江戸川大学バスケットボール部、立正大学ラグビー部、女子サッカーLリーグASエルフェン狭山、早稲田実業高等学校 他

by gacks | 2004-08-08 16:17 | 高校野球クリニック コメント&トラックバックはこちら!


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